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「とりあえず昼餉を食べましょ!皆さんお腹空いてるでしょ?」
ピリピリした空気は嫌だ。
お腹空いてたらカリカリしちゃうでしょ?って笑いながら三津は三人を座らせてちゃっちゃと昼餉の用意をした。
「あ~美味ぇ……。そりゃ毎日食いに帰って来るわな。」
「お口に合って良かったです。」 https://www.easycorp.com.hk/en/notary
高杉に褒められて緩みきった顔で急須からこぽこぽお茶を注いだ。
「食べたらすぐ藩邸に戻るからな。」
「乃美の親父が面倒くさい。藩邸から出さんって大刀持って追っかけて来やがった。」
桂の言葉に子供のように嫌だ嫌だと駄々をこねた。
「晋作が居ると面倒事しか起きないと乃美さんも思ってるぞ。」
『やっぱりわやな人やからかな。』
くすくす笑ってやり取りを聞いていたら高杉の切れ長の目にじっと見られてるのに気付いた。
「三津さんが一緒に来てくれるなら藩邸に戻る。駄目ならしばらくここで厄介になる。」
「は?突然来といて何言ってんの?馬鹿か
?」
伊藤が箸で目を突くぞと真剣な顔で罵った。
「やってみろや。こちとらこれで突いてやるけぇ。」
高杉は脇に置いていた大刀に手を伸ばした。その顔は至って真剣で伊藤は冷や汗を垂らしてふいっと目を逸らした。
「それで丸く収まるなら私行きましょうか?」
藩邸に行くだけでしょ?と首を傾けて桂の顔色を窺う。
「まぁ……三津が居た方が乃美さんの機嫌も幾分良いだろ。」
「所詮は親父やな。何なら膝の上に座らせてお酌させとってくれや。それなら説教出来んやろ。」
「晋作,それでお前に殺意を抱くのは桂さんだけじゃないからな。身内に敵作るの本当に止めとけよ?」
ちょっとだけ高杉から距離を取った伊藤がもっと厄介な奴が居ると忠告する。
「三津さんそんなに誑かしとるそ?魔性か。」
そんな風に見えんのにとまじまじと三津を見る。
「魔性やないですし誑かしてもないんで。
とりあえず高杉さんを藩邸に連れ戻すのが先決みたいなんで一緒に行きますね。」
後は邪魔しないようにサヤ達の手伝いをしておこうと思った。
そして帰りたくない帰りたくないと駄々をこねる高杉を三人で藩邸まで連行した。
「戻ったか高杉ぃーーー!!!」
門をくぐるや否や大刀を手にした乃美が鬼の形相で突進して来た。「げっ!クソ親父!」
高杉は身の危険を察知すると三津の背後に回り,ずいっと三津の背中を押して乃美の前に突き出した。
「乃美さんこんにちは。」
三津はいつも通りの笑顔で頭を下げて挨拶をした。
「んな!三津さん身代わりにしよって!
……すまんなぁ騒々しくて。今日は羊羹あるけぇ後で食べり。」
頭を撫でてから懐に手を突っ込み懐紙の包みを取り出して三津の手に握らせた。
鬼の形相は微塵もなく,目尻を垂れ下げ三津を愛でる。
「これもいつものヤツじゃ。」
落雁だ!と三津は喜んでまたありがとうございますと頭を下げた。
「……乃美さん随分骨抜きにされちょる。あの娘何したそ?」
高杉は眉間に皺を寄せて桂に耳打ちした。
「まぁ……後で話す。とりあえず今はお前の話を聞かにゃならんだろ。」
甘味ぐらい私が与えるのにと内心むっとしながらも涼しげな顔で平静を装う。
「三津,お茶を淹れて乃美さんの部屋に頼むよ。」
「分かりました。」
貰った落雁を大事そうに持って跳ねるように台所へ向かった。
三津の姿が見えなくなると乃美に再び角が生えて鬼と化した。
「高杉……じっくり話を聞かせてもらおうかのぉ。」
たっぷりお灸も据えてくれるわと黒い笑みを浮かべた。
サヤとアヤメにお邪魔しますねと声を掛け,四人分のお茶を淹れて廊下を歩いていると……。
「馬鹿者!お前は何でそう勝手な事を!!」
「ひっ!」
響いて来た乃美の怒鳴り声に思わずビクッと体が跳ねた。
「し……失礼します。」
そぉーっと障子を開けてちょっとだけ顔を覗かせた。