[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
「父上様がされた折の、京土産であったと思います。ずっと以前のことですが」
“ 京 ” という言葉を聞いて
「それは実に好都合」
と蘭丸は満面に笑いを寄せた。
「近々、上様のお供で京へることになったのです」
「…京へ、でございますか?」
胡蝶の片眉がしげに歪む。
「されど父上様は、近く、備中へご出陣あそばされるご予定と伺いましたが?」
「左様にございます。されどその道中で、諸用の為、上様が都へ立ち寄られることになったのです。Notary Public Service in Hong Kong| Apostille Service
…ですから、上様に事情をお話して、それと同じ物をが都で手に入れて参りましょう」
蘭丸は笑顔で申し出た。
すると胡蝶は、し考えをめぐらせた後、再び首を横に振った。
「実に有り難きせではございますが──良いのです。このままで」
「しかし…」
「どんなに同じを頂いても、胡蝶は嬉しゅうございませぬ。この櫛は、父上様の思いがこもった、この世でたった一つの物。
壊してしまったのは私の不注意です故、それを反省しつつ、二度とこのような事がないよう、自身へのめにしたいと思いまする」
胡蝶は割れてしまった櫛を胸の上で握り締めながら、蘭丸に気丈な微笑を向けた。
蘭丸もその思いを汲み取ってか、小さく頷くと
「左様にございますか。 …出過ぎたことを申しました、お許しあれ」
伏し目がちに頭を垂れた。
飛んでもないと、胡蝶がかぶりを振っていると
カラン、カラン、カランッ…!
突として、床の間に下げてある青銅鈴が鳴り始めた。
お菜津は静かに腰を上げ
「様か古沍殿が、姫様の(おやつ)を持って来て下さったのでございましょう」
表を見て参りますると、速やかに部屋を辞した。
それからものの数分で、お菜津は、齋の局と共に部屋へと戻って来た。
齋の手には、塗りの盆が握られており、その上には蓋つきの菓子器が乗せられている。
「──本日は、南蛮菓子の “ こんふぇいと ” をお持ち致しました」
胡蝶の元にやって来た齋の局は、うきうきとした様子で菓子器の上蓋を開けた。
蓋の下から、こぼれ落ちんばかりの白いが、微かな甘い香りをわせながら現れた。
胡蝶は笑顔になって、それを一つ指でまむと
「ほんに、いつ見ても可愛らしいお菓子じゃ。まるで甘い種のよう」
口に入れるのが惜しいと言わんばかりに、うっとりとした様子で眺めた。
齋の局もを打つように、大きく首肯する。
「さすがは上様のお気に入りのお菓子にございます。まことに美味しそ…、いえ、お可愛らしい菓子にございます」
どこか物欲しげな様子の齋の局を見て、胡蝶はふふっと笑った。
「こんふぇいとがお気に入りなのは齋も同じでしょう?」
「いえ、そんな──私ごときが左様な珍しきお菓子など…。いえ、嫌いな訳ではないのですけれど、何だか勿体なくて…」
「お一つどうぞ」
「有り難く致しますッ」
明らかにひと粒以上を指に摘まんで、齋は素早く自分の口に押し込めた。
口の中に広がるその上品な甘みを、嬉しそうに堪能する齋の局を眺めつつ
「確か、父上様がこの南蛮菓子に出会われたのは、京であったな?」
胡蝶はふと思い出したように訊ねた。
齋の局は手で口元を隠しながら、静かに頷く。
「左様にございます。京の二条城にて、ルイス・フロイス殿となされた際に、や何やらの献上品と共に、詰めにされた物が贈られたそうで」
「やはりそうであったか」
「何故に左様なことをおきになるのです?」
「いえ、大したことではないのです。先程まで蘭丸様と京の話をしていた故、なんとのう思い出して」
「…京の、お話?」
「蘭丸様が、父上様のお供で、近く京へるものですから」
胡蝶の言葉に、齋の局は「え─」となる。
「姫様……